「藍」は葉っぱの中では無色だった
草木染めの多くは媒染剤を用いて定着させます。
が、数少ない例外としてあげられる草木染めの代表格が藍染。
媒染剤を必要としません。
大気中や水中の酸素による酸化によって、色素が不溶化します。
また綿でも麻でもよく染まります。
というか繊維の表面にべたべた付きまくるようです。(“藍染めによる綿織物の物性変化” 繊維学会誌より)
以下、簡単に説明。
藍を使った染めの仕組みや方法はちょっと検索すればいくらでも引っかかってくるので、詳しく知りたい方はよそのサイトを参照していただくか、お近くの書店や図書館へどうぞ。たくさんあります。
タデアイが生きてる状態では、葉の中にインディカンindican(グルコースとインドキシルIndoxylの脱水縮合)という無色可溶性の化合物が存在します。葉っぱが摘み取られたり傷ついたりすると、植物中の酵素によって加水分解しインドキシル(オキシドールの構造異性体)になり、空気中の酸素によって酸化されてインディゴIndigo(暗青色)となります。
インディゴは水やアルコールには溶けず、藍として手元に保存されているときはインディゴの状態になっています。この状態で、顔料として絵画や陶芸などにも用いられています。
いわゆる「すくも」もこの状態。
染めに使うときにはこの不溶性のインディゴを再び可溶性にしなくてはならない…。
インディゴは還元するとロイコ体(ロイコインディゴ、黄緑色)というアルカリ性水溶液に溶ける状態になる。伝統的な(還元)手法として有名なのは、すくもに石灰などを加えてアルカリ性にし、天然の還元菌によって還元させ、いわゆる「建て」た状態にする。(ここから、酸化還元による染色を建染めと言うみたい)。
同じことは薬品を使えばもっと簡単。水酸化ナトリウムとハイドロサルファイト(亜ジチオン酸ナトリウム)を加えた溶液にインディゴを溶かしてできあがり。
ロイコ体となり溶けている状態の藍液に生地を投入、引き上げて空気にぱたぱた(水の中で泳がせてもいい)、酸化してあっという間に黄緑色から暗青色へと変化します。
いろいろと面倒くさそうに感じるかもしれませんが、今では市販の藍染キット(合成インディゴ)を買ってくれば誰でも藍染めができます。合成も天然もインディゴ自体は全く同じもの。不純物があるかないかの違いだけです。もっともその違いが大きいとも言えなくもないかも…。
藍染にはいろいろな染め方があり、また国によっても違いがあります。次回、いくつか紹介。
参考
Wikipedia
藍染めによる綿織物の物性変化” 繊維学会誌2008 年 64 巻 9 号 p. 265-271