代表的な媒染剤 -色素に配位する金属イオンたち

媒染剤として使用される金属の代表的なものです。(写真はWikipediaから引用)

ご家庭で試されるのであれば、ミョウバン(明礬)がいちばん手軽でしょう。漬けものの発色(ナスのきれいな紫色)などに使用されるくらいなので、多少口に入っても大丈夫(とされています。というのも、媒染剤の多くは食べちゃだめだから)。スーパーで買えます。

発展途上国などで、飲料水を確保するために貯水にミョウバンを加え飲み水にするところがあります(過去日本でもやっていましたね)。これはミョウバン(アルミニウムイオン)が水溶液中の分子と結合、不純物が不溶性になり沈殿するため上層の水がきれいになるからなのでしょう。
でも昨今、ミョウバンの使い過ぎによる人体への影響が問題として取り上げられるようになりました。影響が少ないとはいえアルミ化合物、取り過ぎは良くないようです。

少し前まではカドミウムクロムなども使用されてました。重金属あるあるで発色がよかったのでしょうが、最近では安全性に対する考え方のほうが重要視され、媒染剤としては使用頻度が下がってきました(というよりも一般的にはほぼ禁止)。絵具のカドミウムイエローとか有名ですよね。

僕の経験上、鉄はグレー系、銅は茶か緑、アルミは煮汁の色が鮮やかになる感じ、スズはレモン色っぽく、チタンは赤色寄り。
もちろん使用する草木によって違いますが、大まかにはこんな傾向。
でも同じ染料と媒染剤でも、綿と絹ではかなり発色が違います。タンパク質とセルロースでは表面の足場が違うからでしょうか・・・。

前のほうで書いた、植物の灰から作った灰汁による媒染ですが、椿の灰を用いた灰汁が有名です。トラック一杯の椿燃やしてほんのちょっとの灰。えらくコストがかさみます。椿灰の成分には、当然炭素、酸素が多いのですが、つづく主な元素に、カルシウム、カリウム、アルミニウム、マンガン、リン、マグネシウム、バリウム、鉄、などなど。この中で発色に関与する金属として、アルミニウムと鉄があげられますが、土中の比率に比べて、椿内ではアルミが数十倍多くなってるそうです。
The Study of Physiology of Plant by Observing the Color of Cloth and Fiber Dyed with Plant Pigment (Keiko MATSUMURA, Bull. Nara Univ. Educ., Vol. 57, No.2 (Nat.), 2008)

剪定した椿の枝
軽トラの荷台ぶんくらい?

我が家の畑には椿がわんさかと(母の趣味と実益)ありまして、冬の剪定の時期に結構枝が出ます。でも椿だけを灰にするのはとても面倒…(一応うちは農家でここは田舎ということもあり、畑の作業で出た枝などを焚火程度なら燃やしてもよいそうです。試されたい方は消防署に一言連絡を入れてから燃やしましょう)

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染色と科学 -染め物はなぜ染まる?

染色(せんしょく, Dyeing)とは? 染まるってどういうこと? 染めた色はなぜ落ちない? 草木染め(くさき

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